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Satellite Of Digitalis Syndicate

Kudo Garden

夕刻の帰路、工藤ガーデンに続く坂道を上っていく。

工藤ガーデンはめったにない風情の広い庭だ。
背の高い樹木が鬱蒼と翳を落とし、下生えさえない暗い土の色が良い。
陽が差し込まないほどの木々に、静謐な空間。

仔猫が跳んでまわるには広い庭で、神社の角のゴミ捨て場に捨てられていた2匹が、
たまたまの巡り合わせで、隣家の広い庭で思いきり走りまわって育つことになった。

お屋敷街の静謐な庭。

本来なら縁のない世界だが、自宅の建て替え中に仮住まいで棲んだ取り壊し寸前のアパートは
豊かすぎる隣家の庭を眺められるというオマケがついていた。

赤トラとアンドホワイトの兄弟は庭で散々遊ばせてもらいさえした。

その庭を、僕らは「Kudo Garden」と呼んでいた。

棲んでいる間は表札でしか姓を知らなかった工藤氏を、一度だけ見かけたことがある。
同じ坂道を上ってきた時に、偶然ちょうど門扉を開けて入っていく老齢の紳士を見かけたのだ。
小柄な、品の良い風情の人だった。

あれが、工藤さんか。

それから10年以上は経つ。今、書きながら気がついた。
「Kudo Garden」は静謐な佇まいのまま変わらず、今年も暮れていく。

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