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Satellite Of Digitalis Syndicate

水野楼良の名前 – くらもちふさこ「花に染む」

この記事はいずれ、花に染む「体配」の意味 という記事へと続く。

もうほとんど書いてあるが、先にこの水野楼良の名前の意味を知らないとわからない部分も生じるので、重複する箇所は多いだろうが、先にアップする。

「花に染む」と「駅から5分」の切り離せない繋がりを読み解くには、水野楼良と、千場伊織が、絶対的なキーマンであるということだけ予告として書く。

水野楼良の度が過ぎた献身を「最後に」後押ししたのは、雛が貸した携帯電話と、「卍ダンス」を踊る千場の気まぐれに近いメール送信。

千場がなぜ「卍ダンス」なのか。

「卍ダンス」を踊る身元のよくわからない不思議な少年が誰かは、読み手は自分の想像に任せて良いのだろう。

「卍ダンス」を踊る少年が、人からの「施しの服」を着ていて、パンだけで肉を避けるというのは、**徒には、たまらない垂涎モノの設定だが
ただ彼が、心神喪失のフリをしていた陽大を「花染町」へ向かわせるきっかけを作り、
彼が、最後のスイッチを押した、それが意味することだけ伝わればいい。

さて、11月21日のこと。

昼ごろ食事に下りてテレビをつけ、そのまま画面を見もせずに、コーヒーを淹れようとしてたら後ろのテレビから「砂上の楼閣」という声が聴こえてきた。
韓国のパク大統領のニュースを昼時の報道番組でMCが何か読み上げていたのだ。

振り返って、思わず「それだ」とテレビ画面を指差していた。

「砂上の楼閣」

物語の結末が見えたら、プログラムの起点も見える。
水野楼良は「対の二作」が揃った時に、壮大なファンタジー物語になると示唆するための目印。
誰がどう見ても、和弓に似合わないエキセントリックなファンタジー娘に「水の」と「楼閣」と名付けて登場させる。しかも良い「楼閣」

そう考えると、神話である「古事記」そのものが、この国の誰もが知っている最もポピュラーでエキサイティングな「ファンタジー」なのだと後から気づいた。
だから「花に染む」は「花」と「神・稲」が主人公で主役、そして水野は「雨は私の味方」と言う。つまり砂漠に降る雨のことだ。

誰だ、遊郭なんぞと言ったマヌケは。俺か。俺・・・いやちょっと待て、丸山、丸?
丸山・・・美輪様、三輪山、丸山。そうか。

「丸山蘭水楼の遊女たち」は故井上光晴(井上荒野の父)の古い小説で、丸山明宏こと美輪明宏氏は、その丸山遊廓の出身者で長崎の被爆者である。
三輪山は、たしか山の形が素直に丸く美しいので神が宿る御山として名高いのだ。
美しく丸い三輪山の、丸山・美輪明宏。
丸と輪と、三輪山の美しい山の形をかけ合わせた芸名だったのか。

丸は、円だ。

圓城陽大の「円・圓」を昔の人が「欠けたところのない、完璧な」と意味を持たせた心境は、辞書で知るよりも三輪山の話の方がわかりやすいな、漢字は形由来だとそんなことを考えながら

それにしても、ファンタジー作品の冠として、「砂上の楼閣」というキーワードを持ち込むのは、とにかく凄いな、と思った。

今時の現実生活で楼閣なんて表現を使うことはまずないが、「砂上の楼閣」なら誰でも聞いたことがある。

その上、花も稲も水がなければ育たず、砂漠は雨水がいちばんの宝だ。この水の無双感(笑)

しかも、砂漠に水がしみわたると変換しようとすると、「染み渡る」と出た。
恵みの雨。

雨も水も作者が読者に気づかせるための、最大の味方でした。本当に。
そして今になって愕然とするのは、「花に染む」の主人公・花乃が「駅から5分」にはいっさい登場しない。
それこそ「不在の理由を探せ」という、いちばん大きな目印なのに、いやはや・・・大きすぎる看板は、目の前にあっても気づかないって、これだよ。
あともう一人出てこない主要人物がいるでしょうと、そうなれば「駅から5分」は圓城陽向が主役だ、と一直線で指していた。

まぁね・・・「花に染む」全編を通して、男の鈍さをあんなにご丁寧に描いてくださった作者ですから(反撃にもならん弱い嫌味や・・・)
本当に、あれやこれやとキメ細かいフォローはされてましたね、どこもかしこも、例外処理まで完璧に。

「駅から(5)分」ー「花に染む」の主要登場人物は(5)人

この看板も、見慣れすぎて、撤去されるまでそこにあると気づかない盲点・・・


くらもちふさこさんの現、最新作「駅から5分」と「花に染む」関連記事は
タグづけした 「くらもちふさこ」 にまとめているので
そのリンクを踏めば、記事投稿日の降順(新しい順)に全記事が表示されます。

が、駅から5分 = Cloud Atlas ー くらもちふさこ「花染町」地図 という記事以前に書かれた内容は、ブログ筆者の推測部分が多く、完全な内容ではありません。
何故なら、「駅から5分」と「花に染む」という「対」の二作品の土台が、デイヴィッド・ミッチェルの小説「クラウドアトラス」(2004年)を踏襲していることに、当時、気づかないまま、単体の作品として読んでいたからです。

「駅から5分」は初回と最終回を除くすべてが「花に染む」にリンクしている、セルフオマージュとして。その仕掛けが、クラウドアトラス=雲の地図。
「花に染む」は単体でもエンディングを理解できますが、「花に染む」を内包する「駅から5分」は、映画版「クラウドアトラス」にも匹敵する素晴らしい輪廻転生ファンタジーでした。

『水野楼良の名前 – くらもちふさこ「花に染む」』へのコメント

  1. 名前:ころた 投稿日:2016/11/27(日) 12:16:28 ID:ad94cc97c 返信

    こんにちは。思うところがあってコメントさせて頂きます。

    花に染むの最終刊を読んで自分の もやーっとした部分をどなたかが言葉に表現してくださってないかな?と思い検索してブログを拝読させていただきました。
    私は普段ほとんど本は読まないですし、古事記などにも疎いので、全然知らななったこと、気づかなかったことなど沢山書いてくださっていたので、なるほど!と思いながら一気に一連の記事を読みました。
    くらもち先生の作品は本当に何度も何度も読んで気づかされることの宝庫なのですが、こうして文章に書いてくださるのが私にとって本当に有り難かったです、ありがとうございます!!

    長々とコメント失礼しました。
    ありがとうございました!

  2. 名前: 投稿日:2016/11/27(日) 14:58:00 ID:37ca9d19b 返信

    コメントありがとうございます。

    たくさんの来訪者がありつつ、特にコメントなく、寂しい思いをしてましたので(笑)
    初コメいただき嬉しいです。

    花に染むは「射法八節」の8にかけて8巻完結と決めて描かれた作品、しかも最後まで何が書きたいか考えて欲しい、推測して欲しい仕立てですから、わざとぼかしをかけているのですよね。
    テレビでいうモザイクというやつ。

    それが先にわかっていれば、もっと簡潔・的確にまとめられたのですが
    長い長い巻物のような記事を読破していただき感謝です。

    • 名前:クータン 投稿日:2016/11/29(火) 21:06:17 ID:24da77270 返信

      初めまして。何度も訪れては特にコメントなく去っていたのは私です!
      大変失礼いたしました。
      私も、ころたさんと同じ気持ちです。
      とってもとっても楽しませていただいてます。ありがとうございます。
      「花に染む」ロスのうえに「駅から5分」まで終わってしまい、くらもちふさこロスの私は癒されまくってます。

      • 名前: 投稿日:2016/11/29(火) 21:51:30 ID:a7a969768 返信

        はじめまして。自己申請ありがたく(笑)
        でも皆さん、そうですから^^
        めちゃくちゃ大勢来てくださっているので逆にビビってました、読んでどう思われているのかなぁとか。
        もう一人でも二人でも、癒されたと言ってくださる方がいるのは、とても嬉しいです。
        コメントくださって本当にありがとうございます。

        そして8巻発売後のアクセス数を見るかぎり、「花に染む」はかなり売れている模様。
        「駅から5分」のコミックス絶版を知り、え。と暗〜い気持ちになって、ナニくそで書いてきましたが
        電子書籍はあるから、みんな買って読むよなっ と喜んでます。

        ロスになるほどのファン、すごく正しいと思います。
        記事を書いてる時も、長年の読者を信じてなきゃこんな構成で描けねぇだろ・・と敬服してました。
        作者にもファンの方々にも。

  3. 名前: 投稿日:2016/11/30(水) 23:24:35 ID:5dbd8c23a 返信

    おーいちょっと待て、と思いついた。
    マリーアントワネットはフランス王妃だ。「仏」国から御仏の慈悲を行うためにやってまいりましたと自己紹介してるようなもんぢゃないの。
    作者、凄すぎ。

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